硝子戸と狼

別名義でネットに投稿した詩をまとめています。

blue doll

 

  

「わぁ、けったいなホテルやね!」

それはひどく訛っていて、それでいて

空だって飛べそうな声だった。

飛行機が、ひとさし指の爪から抜けていった。

片手は尖った肩甲骨に触れる。

脚は針みたいに扉の前に刺さっている。

 

    ***

 

これから私を構成していくのはなにか。

それを記していく義務がある。私のあとに続く人のために。美味しいご飯に、綺麗に保つ部屋。かわいそうだって思うなら、力を抜いて。

そう、ここから羽が生えるんよ。

 

 

いつしか痣は綺麗になって、

頬は丸くつやめいた。

月に一回、私はまだニンゲンなのだと気づく。 

価値は。

価値は、いつになったら失われるのだろう。

羽がなくてはどこにもいけない。

それでも

心はどこまでも自由。

ボールペンはメモ帳を軽やかに走っている。

 

 

これは、まだ天使以下の私が

天使になるまでの物語だ。