硝子戸と狼

別名義でネットに投稿した詩をまとめています。

ぼくらのサマーフェスタ

 

 

もし、乗ってるエレベーターが墜落したらどうする? 

重力は反転するかな。

そうなるなら、天井に足跡をつける初めてのひとになってみたい。

 

ねえ、その話よりにもよってジェットコースターに乗る前にする?

 

アフターファイブの貨物車はふたりを載せてがたごと天へ運んでいく。

風を切る。開いたままの口元が綻んだ。舌噛むよ。上ずった声できみは笑った。

雨でも槍でも星でもない、夜空を切り裂いた色彩。この時のために、空はまっすぐにハサミを研いで待っていたのか。残響はぽろぽろ糸の破片を落として消える。

 

この坂をくだったらどうしてやろうか。飛行機を買おう。真っ白な機体をカラースプレーでめちゃめちゃにしてやって、おっきなまる、みっつ描いてやろう。いいね。ロック。……ロケットでもいいよ。レールは宇宙飛行士を目指すぼくらのために一回転した。

ハサミが降る夜に二度目があるなら、下からではなく上から見たいから。

 

その日、著作権を捨てて自分の足で歩いた。拭った額には体温があった。

名無しの入園券片手にベンチで夜を明かすような

おとなげないことをまたどこかで、元気に。

 

 

 足跡は描く。風が真夏の輪郭をなぞっていく。

blue doll

 

  

「わぁ、けったいなホテルやね!」

それはひどく訛っていて、それでいて

空だって飛べそうな声だった。

飛行機が、ひとさし指の爪から抜けていった。

片手は尖った肩甲骨に触れる。

脚は針みたいに扉の前に刺さっている。

 

    ***

 

これから私を構成していくのはなにか。

それを記していく義務がある。私のあとに続く人のために。美味しいご飯に、綺麗に保つ部屋。かわいそうだって思うなら、力を抜いて。

そう、ここから羽が生えるんよ。

 

 

いつしか痣は綺麗になって、

頬は丸くつやめいた。

月に一回、私はまだニンゲンなのだと気づく。 

価値は。

価値は、いつになったら失われるのだろう。

羽がなくてはどこにもいけない。

それでも

心はどこまでも自由。

ボールペンはメモ帳を軽やかに走っている。

 

 

これは、まだ天使以下の私が

天使になるまでの物語だ。